海の博物館

もう今から7~8年ほど前のことですが、ゴールデンウィークを利用して、伊勢志摩へ旅行に行きました。その時に立ち寄ったのが「海の博物館」です。この建物は東大名誉教授でもある内藤廣氏の設計。この「海の博物館」で日本建築学会賞、吉田五十八賞、芸術選奨新人賞などを受賞されています。

中でも米松の大断面集成材によるアーチが圧巻の展示棟は、巨大な生物の骨格標本の中にいるような感覚を覚えます。この写真、見覚えがある!!…という方は数少ないロータスマニアかもしれないです(笑)。実はこのサイトのトップメニューから、建築事業部>製品>SE構法のページ(http://www.lotus-com.co.jp/?page_id=10)へアクセスして頂ければわかります。

SE構法とは、構造計算を取り入れた設計のもと高精度集成材とオリジナルSE金物を採用した構法で、木造ながら高い強度を実現しています。「海の博物館」はじめ体育館など木造大型建築にも数多く採用されています。住宅の場合、木の質感や伝統工法の雰囲気を残しつつ、大開口や吹抜け、自由な間取り、ビルトインガレージなどが可能となります。「海の博物館」ではこの構造体がコンクリートの床から立ち上がっており、集成材の形状や木の質感を手で触れて実感できます。

さて「海の博物館」で、もうひとつ目を惹いたのは外壁です。海の近くのため塩害対策として、そして経済性という観点から外壁は杉板にタール状の塗装だけのシンプルな仕上げ。かつて伊勢志摩地方の民家や網小屋では、真っ黒な鯨油を塗っていたそうです。内藤廣氏の著作「建築のはじまりに向かって」(王国社1999年初版発行)によれば……最低限の仕様でこの地域の塩害、風、雨といった厳しい風土的条件をクリアするには、かつての集落にあった単純で素朴な地場の知恵を借りない手はない。(一部抜粋)……とあります。

写真はあえてセピアトーンにしてみましたが、僕が見た当時、すでに竣工から10数年経っていましたが、それほど風化が感じられませんでした。“単純で素朴な地場の知恵”という言葉には、「晴海ヶ丘」での建築デザインのヒントがあるような気がします。